再生医療分野の市場規模

内閣府が発表した『再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業複数課題プログラムの概要』によれば、再生医療分野は今後大きな成長が見込まれており、2050年には日本国内市場で約2.5兆円、世界市場では約38兆円規模に達すると予測されています。この数字は、再生医療が医療経済において重要な柱となる可能性を示しており、医療技術の革新と産業化の両面で大きなインパクトを持つことが期待されています。

このような市場成長の背景のもと、CTTは、歯根膜由来幹細胞を用いた「歯根膜細胞シート」の研究開発を推進しています。この技術は、歯周組織の再生を目的とした再生医療等製品であり、現在、薬事承認取得に向けた臨床開発が進行中です。歯根膜細胞シートは、骨形成を促すサイトカインの分泌や歯槽骨の再生誘導など、従来の治療法では困難だった歯周組織の修復を可能にする革新的な治療手段です。

なお、日本国内ではすでに10品目以上の再生医療等製品が承認・上市されており、再生医療の社会実装は着実に進展しています。CTTはこの流れを加速させるべく、歯科領域における再生医療の普及と、患者への早期提供を目指して事業を推進しています。

CTTの使命は、科学的根拠に基づいた安全かつ有効な再生医療技術を、より多くの患者に届けることです。そのために、研究開発・薬事戦略・製造体制・臨床連携を一体化させた事業モデルを構築し、社会的価値と医療的貢献の両立を目指しています。

CTTの市場戦略

CTTが研究開発を進める「歯根膜由来幹細胞シート」は、歯髄幹細胞を起源とする再生医療等製品です。歯髄幹細胞は、骨・神経・血管など多様な組織への分化能を有する多能性幹細胞であり、優れた再生誘導能力を持つことが知られています。

現在CTTでは、この歯髄幹細胞の特性を活かし、歯周組織以外の領域への応用展開を検討しています。具体的には、顎骨欠損部位への骨再生治療や、歯槽膿漏による広範囲骨吸収への対応などが挙げられます。

さらに、歯髄幹細胞は神経再生因子(NGF、BDNFなど)や抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-βなど)を分泌する能力を有しており、末梢神経障害や顎顔面領域の神経損傷、慢性炎症性疾患(例:顎関節症、口腔粘膜炎)への治療にも有効であると考えられます。

CTTとしては、これらの生物学的特性を最大限に活かし、歯科領域にとどまらず、再生医療の対象疾患の拡大に向けた研究開発を積極的に推進してまいります。

CTTの知財戦略

CTTは、東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)との間で、再生医療技術に関する共同研究契約を締結しています。この契約は、歯根膜由来幹細胞シートをはじめとする再生医療等製品の研究開発を対象としており、大学が保有する知的財産(特許・技術ノウハウ)を活用した製品化を目的としています。

本契約に基づき、CTTは独占的実施権を取得しています。これは、東京科学大学が保有する関連技術について、CTTが日本国内外で唯一製品化・事業化できる権利を有することを意味します。第三者による同技術の使用や製品化は、大学の承諾なしには認められず、CTTが技術の商業展開において優先的地位を確保することが可能となります。

さらに、製品が上市(商業販売)された後は、CTTが東京科学大学に対して、契約に基づくロイヤリティ(技術使用料)を支払うことが定められています。これは、大学の知的財産を活用して得られた収益の一部を、技術提供元である大学に還元する仕組みであり、産学連携による知的財産の社会実装と持続的な研究支援を両立させる制度です。

このような枠組みにより、CTTは大学の先端技術を活用しながら、再生医療分野における製品開発と事業化を加速させるとともに、学術機関との連携を通じて、医療技術の社会的価値を高めることを目指しています。

発明の名称

間葉系幹細胞を含む細胞集団、細胞シート及び細胞シートの製造方法

発明者

岩田 隆紀
鬼塚 理

出願人

国立大学法人東京医科歯科大学

特許出願番号

PCT/JP2022/042503

出願国

日本、アメリカ、EU、中国、韓国、インド、オーストラリア、カナダ、サウジアラビア、シンガポール、ベトナム、マレーシア